文明の黎明以来、技術の発展は私たちの生活や社会を大きく変化させてきました。いま、私たちは、人工知能(AI)の急速な発展とその影響力の拡大に直面しています。
AI技術は、自律性の向上を志向する点でこれまでのどんな技術とも異なります。たとえば、AIは自らデータを学習し、新しい状況に適応してより良い結果を得ることができます。また、人間の創造性を模倣して新しいものを作り出し、さらにはこれまで人間が成し得なかったような成果を挙げることもできます。自律性が向上することで、AIはより複雑なタスクをより少ない人間の介入で遂行出来るようになります。このような技術は社会において膨大な価値と利益を産むため、今後、AIは急速に人類のあらゆる活動領域に浸透し、社会の不可欠・不可分な一部となってゆくでしょう。
しかし、AIの自律性は問題と表裏一体でもあります。たとえば、AIが自律的に行動することで、人間の意思に反する行動をとる可能性や、人間がコントロールできなくなってしまう可能性もあります。したがって、今後の人類社会の発展のためには、AIシステムが人間の意図する目的、嗜好、あるいは倫理原則に沿って動作する必要があります。AIアライメントは、この必要性を満たすための技術領域です。
AIアライメントには、AI技術そのものだけではなく、人間、社会、そしてそれらをとりまく環境との相互作用までを含めた多面的な理解と洞察が必要になります。AIアライメントを具体的な設計論として実現し、そして実効性のある実践に結びつけるためには、多様な専門領域の研究者や技術者に加えて社会の様々なステークホルダーを巻き込んだネットワークを形成して総合的に進める必要があります。
我々は、AIアライメント研究とその実践を振興するため、「一般社団法人AIアライメントネットワーク」を設立します。私たちの主たる活動は、AIアライメント研究者の育成と支援です。国内外で研究者が不足している現状に対し、教育と研究の推進を通じてこの分野を強化します。さらに、社会全体がAIアライメントの重要性を理解し、共通の認識と価値を創造するための取り組みも行います。幅広いステークホルダーとの対話を通じて、この新たな分野の礎を築きます。
日本を基盤とした国際的なネットワークを形成してAIアライメント研究を推進することには、西欧中心の視点とは異なる新たな視角を与えるという大きな価値があります。我々は、この活動を通じて、AIが人間社会と調和し、共に繁栄する未来を追求したいと考えます。そして、この活動が、私たち全員が協力してこれから直面する重要な課題に立ち向かうための糧となることを願います。
2024年2月
共同設立者一同